普段の立ち姿勢や座り姿勢の時に肩や腰が痛くなるなんてことありませんか?
特に脳卒中(脳梗塞/脳出血)の後遺症が残る側の半身が極端に挙がる(もしくは下がってしまう)などがあり、バランスがうまく取れず、痛みが出てくることもあるかと思います。
今回は、良い姿勢とはどんな姿勢なのか、良い姿勢を作るために必要な体の機能とトレーニング方法についてご紹介していきたいと思います。
目次
良い姿勢はどんな姿勢?
まず良い姿勢のポイントとしては
重心線が真っすぐに伸びている
左右の傾きがない
この2つのポイントを確認し、良い姿勢かどうかを判断します。
姿勢は座っている時、立っている時のどちらにも当てはまります。
重心線は正面と横向きの両方から確認しましょう。
特に横からの姿勢では猫背になっていたり、腰が反りすぎていたりすることもあるのでしっかりと鏡や写真などを見て確認しましょう。
左右の傾きで確認するポイントは
頭
肩
骨盤
膝
足
になります。
これらの位置が捻じれていないか、どちらかが高くなったりしていないかを確認しましょう。
これらの良いとされる姿勢は脳梗塞の後遺症である片麻痺や感覚障害などがあると調整が難しかったり、良い姿勢からずれていることに気づきにくかったりします。
次の項目ではなぜ脳梗塞の後遺症があるとよい姿勢が保ちにくくなってしまうのかについて説明していきたいと思います。
脳梗塞後遺症による姿勢が崩れる原因
脳梗塞の後遺症により運動麻痺がある方、感覚障害がある方など様々な症状が後遺症として見られます。
その中でも立ち上がったとき、歩いているときに手や足がつっぱる、意図していないのに関節が曲がってしまうなどの症状は良い姿勢をとろうとするときの障害になります。
では、どのような症状があるのかを具体的に確認していきたいと思います。
運動麻痺のパターンは
完全麻痺(弛緩性麻痺):全く動かせない、力が全く入らない。
不全麻痺:動きはするが思っているように細かく動かせない。
痙性麻痺:勝手に力が入ってしまい、力加減を制御できない。
の3パターンに分けられます。
この中の不全麻痺、痙性麻痺ではさらに
共同運動パターン ⇒決まった運動のパターンに従い体が動いてしまう。 1つの筋肉だけを動かすことができず動きがパターン化してしまう。 主に屈曲共同運動パターン、伸展運動パターンの2種類
連合運動反応 ⇒1つの関節運動の動きに伴い、他の関節も運動に伴い反応し動いてしまう。
などの症状に分けられます。
これらは脊髄より上の神経、脳や脳幹などの影響を強く受け起こる症状であり、上位運動ニューロン障害と言われます。
特に症状として見られやすいのが、腕と足です。
腕とは指先~肩(肩甲骨などを含む)部分です。
上肢(じょうし)ともいわれています。
上肢の共同運動パターンは屈曲運動パターンがみられやすく、連合反応も指先が細かく使えない、手を動かそうとして肩まで上に上がってしまうなどの様子が見られます。
足は股関節の付け根~足先までの部分です。
下肢(かし)ともいわれています。
下肢の共同運動パターンは伸展パターンがみられやすく、連合反応では歩くときに足を出すたびにつっぱるように動いてしまう、伸ばしたままの足が持ち上げられないため足を振り回すように歩くぶん回し歩行などが見られます。
これらの姿勢をとるときに筋肉は休まることがなく、常に収縮(力が入っている)している場合が多くあり、疲労感や痛みなどを引き起こすこともあります。
また力が常に入っていることもあり、血流が滞り、しびれが出てきてしまうなどの二次的な障害となることも良く見られます。
これらの症状があることにより、楽な姿勢、力を抜いて動く、力加減をするなどが難しくなってしまいます。
ではこれらの改善に向けたトレーニングの方法についてご紹介していきたいと思います。
改善方法
力の入り具合を確認し、調整する
まずは力が入っている時と入っていない時の身体の状態について、ご自身で確認していく必要があります。
立っているときの足の位置や手の位置などはどうかを視覚的に確認する、力が入っている時と力が抜けている時の筋肉の固さを触って確認するなどの方法があります。
この違いを目や手の感覚に頼らずに感じ取れるようになることが大切になります。
力を抜く方法としては、まずはゆっくりと呼吸をするように意識しましょう。
脳梗塞の後遺症の1つとして自律神経が乱れることがあり、自律神経は交感神経が優位になると、筋肉は強張ってしまいます。
深呼吸は自律神経を整えるためにも必要な行動です。
まずはしっかりと自律神経を整えていきましょう。
その他の方法としては、仰向けやリラックスできる姿勢をとり、目をつぶる、リラクゼーションを受けるなどの方法があります。
リラクゼーションなどは整骨院や専門のリハビリスタッフに施行してもらいましょう。
鏡や動画で自分の姿勢を確認する
ご自身が動いているところを客観的に確認することが力加減を覚えたり、姿勢を調整するのに役立ちます。
真っすぐ立っている姿勢や歩いている姿勢を確認し、ご自身の感覚と実際の動きに乖離がないかを確認しながら修正していきましょう。
目標物に向かって手足を動かす
姿勢をよくするためには力加減をしながら動きを反復していくことが大切になります。
運動はお身体の状態に合わせて段階的に行っていく必要があります。
この運動は自主トレーニングとして実施することも可能ですが、無理な姿勢や動かし方をしてしまうと痛みやより強い共同運動パターンや連合反応を引き起こすことがあるので実施する際には注意が必要です。
運動方法についてはお身体の状態に合わせて実施する必要があるため担当の理学療法士や作業療法士と相談して実施するようにしましょう。
姿勢改善につなげる重症度別トレーニング
重症度の確認方法
今回はバランスや姿勢に注目して確認していきたいと思います。
テストの方法を2パターンご紹介するので、ご自身でできるほうを選択し、確認してみましょう。
歩行動作
歩く動作は姿勢やバランス能力を図るためには重要な確認方法です。
歩く姿勢などの確認は専門的な知識が必要になりますが、歩く速度であればすぐに確認できるかと思います。
10m歩くのに20秒以上かかる
⇒重度
20秒以下だが、12秒以上はかかる
⇒中等度
12秒以下で歩ける
⇒軽度
リーチテスト
両足を揃えて片手を前に伸ばす方法です。
軽く腕を伸ばした状態から最大限に伸ばした距離を測り、その距離に応じてバランス能力や、姿勢を保つ能力を確認する方法です。
手を最大限に伸ばした際に踵が浮いたり、足が前に出てしまったり、壁にもたれかかったりしないようにしましょう。
15㎝以下
⇒重度
30㎝以下
⇒中等度
30㎝以上
⇒軽度
※これらの検査はあくまで簡易的に確認する方法です。
テストや自主トレーニングを実施する際は、転倒に十分注意しながら行うようにしてください。
重度
① バランス練習
【目安回数:各方向に10回ずつ】
【方法】
手すりなどを持ちながら立位姿勢をとります
ゆっくりと上下左右に首を向けます
無理に身体を捻らず、首だけ動かすようにしましょう
② 方向転換練習
【目安回数:10回×2セット】
【方法】
手すりを持ちながら立ちます
4歩で方向転換します
③ 立ち上がり練習
【目安回数:20回×2セット】
【方法】
椅子に座ります
足の位置は肩幅に開き、前後の位置や足先の向きを揃えます
左右の足に体重が乗るように意識してゆっくりと立ち上がります
立ち上がるときにふらつきやすい、足に力が入りにくいなどがある方は手すりを使用しましょう
④ ヒップリフト
【目安回数:20回×3セット】
【方法】
仰向けになります
両膝を90度ほど曲げます
お尻を天井に向かい持ち上げます
ゆっくりと元の姿勢に戻ります
お尻を上げるときや元に戻すときに膝同士が付かないようにしましょう
中等度
① 体重移動練習
【目安回数:20回×2セット】
【方法】
手すりや壁に寄りかかりながら実施しましょう
立位姿勢をとり、ゆっくりと麻痺側に体重を乗せます
しっかりと体重が乗せられる人は壁側にもたれるまで体重を乗せてみましょう
② ワンレッグヒップリフト
【目安回数:左右各10回×3セット】
【方法】
仰向けになります
足を組み、下にある方の膝を90度に曲げます
片足でお尻を天井に向け持ち上げます
ゆっくりと元の姿勢に戻ります
③ 段差練習
【目安回数:左右各10回×3セット】
【方法】
手すりや壁が近くにある場所で行いましょう
片足を上げ、台にのせます
ゆっくりとのせた足に体重を掛けます
台から足を下ろします
④ 体幹側屈運動
【目安回数:左右各10回×2セット】
【方法】
足を肩幅に広げ真っすぐ立ちます
身体を右側(左側)にゆっくりと倒します
ゆっくりと元の姿勢に戻ります
身体を横に倒すときに倒した側の腕は足に這わせるようにしましょう
軽度
① 細道歩き
【目安回数:5往復】
【方法】
10㎝幅に目印をつけます
10㎝の幅の上を歩くようにしましょう
この時に足が10㎝の幅より出ないように意識して歩きましょう
② 身体捻り
【目安回数:左右各10回】
【方法】
真っすぐに立ちます
ゆっくりと身体を捻り、後ろ側を向くようにしましょう
③ バードドッグ
【目安回数:左右各10回×3セット】
【方法】
四つ這いになります
右手(左手)を頭の上に伸ばし、同時に左足(右足)を後ろに伸ばします
10秒間姿勢をキープします
④ 片足立ち練習
【目安回数:左右各10秒×5セット】
【方法】
手すりや壁の近くに立ちます
片足を上げ、片足で立ちます
ふらついたり姿勢が安定しない場合は手すりや壁を使用しましょう
反対の手足でも同様の運動を行います
しびれや痛みなどが強くあるという方は、無理に運動すると痛みやしびれが悪化する場合もあるので無理に行わないようにしましょう。
今回ご紹介した運動の他にも、お腹周りや全体のバランスを整えるようなトレーニング、回数や実施方法など細かく調整していくことが改善のためには必要になっていきます。
その他の自主トレーニング方法や注意点などを詳しく知りたい、リハビリを継続したいという方はお気軽に御連絡いただければと思います。
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